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EPOの拡大審判部への新たな付託

EPOの拡大審判部への新たな付託: 同一出願人、同一発明について2つの特許を付与することは可能か?

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審判部(T318/14)は、ダブルパテントの禁止について拡大審判部に付託し、受領された。(16 Jan 2020, G4/19)

審判部は、国際出願WO-2010/130661に基づく欧州特許出願EP10718590.2がEPC第97条(2)項に基づき「EPC第125条に関連して」拒絶された審査部の決定に対する審判を受けた。

審査部は、本出願の請求項1は、欧州特許EP09159932.4に既に請求されている主題と同一の主題を対象としており、その優先権はEP10718590.2によって主張されていると判断した。

実際、EPOの実務では、EPOで最初の出願が行われたときに、優先権期限内に第2の欧州特許出願または欧州広域段階に入るPCT移行手続きを行い、最初の出願の優先権を主張し、第1及び第2の欧州特許の双方を有効に維持して21年の保護の利益を得ることができた。

いわゆる「内部」優先権*のこの文脈において、この保護は判決G 1/05及びG 1/06においてダブルパテントの禁止の原則に反するとされ拒絶された。

親出願に係る分割出願についてはダブルパテントの禁止が比較的明確であるように思われるが、この内部優先権については明確ではない。

実際、分割出願に関しては、拡大審判部は、ダブルパテント禁止の原則は、出願人が同一主題について既に付与された特許を所有している場合には、同一主題についての第二の特許の付与につながる手続には正当な利益がないという考え方に基づくものであるとの傍論を受け入れている(G 1/05 - 13.4参照)。

しかし、「内部」優先権、すなわち欧州特許出願が他の欧州特許出願の優先権を主張する場合には、統一的な慣行は存在していない。

G 1/05及びG 1/06を内部優先権の解釈の文脈に適用した判例(T2461/10など)の中には、ダブルパテントを禁止しているものもある。

しかし、G1/05、G1/06は、出願人の正当な利益の欠如を理由とするダブルパテントの禁止を根拠としている。したがって、他の判例は、「内部」優先権のケースの場合、出願人は正当な利益を有しているので、ダブルパテントを拒絶する理由はないとしている(T1423/07)。つまり特許権者は、EPC63条が規定する20年間の保護に、最終的には1年間の保護を追加することができる。

さらに、審判部の決定によって、ダブルパテントを禁止する法的根拠は、EPC60条、EPC63条、EPC125条の間で異なっている。

したがって、ダブルパテントが禁止されているかどうか、どの程度禁止されているかという問題については、審判部の統一的な慣行はなく、判例法も矛盾している。

一方、審査基準は明確である(G-IV-5.4)。「同一の出願人から同一の国を指定する2以上の欧州出願があり、それらの出願のクレームが同一の出願日又は優先日を有し、かつ、同一の発明に関連する場合は、出願人は、出願のクレームの主題が同一でないように1以上の出願を補正するか、又は重複する指定国を取り下げるか、又はどの出願の特許付与手続きを希望するか、の何れかを選択しなければならない。出願人がそのようにしなかった場合には、一つの出願が特許付与された後、他の出願は第97条 (2) に基づき第125条に関連して拒絶される。」

しかし、特許付与が検討されているときにこの状況を実際に確認する審査官はほとんどいない。
そこで、審判部は、拡大審判部に次のような質問をしている。

1. 欧州特許出願が、同一の出願人に付与された欧州特許と同一の主題を権利請求し、EPC54条(2)及び(3)に基づく技術水準を構成していない場合、EPC97条(2)に基づいて拒絶されるか。

2.1 1の質問の答えがイエスの場合、そのような拒絶の条件は何か。また、審査中の欧州特許出願が、以下の各場合に、適用される異なる条件は何か
a) 同日に出願された、または
b) 欧州分割出願(EPC第76条(1)項)として出願された、または
c) 同一出願人の欧州特許出願を基礎とする優先権(EPC88条)を主張して出願され、その基礎の出願が特許付与されている場合、

2.2 特に、これらのケースのうち、c)のケースでは、優先日ではなく出願日が第63条 (1) EPCに基づく欧州特許の存続期間を計算するための基準日であるという事実に鑑みて、(後続の)欧州特許出願に係る特許の付与について出願人は正当な利益を有するか?

拡大審判部の見解が、この法的不確実性を減少させることになるだろう。

 

*「内部」優先権:”internal” priorityはEPO判例にある通称で、パリ条約優先権ではなく、同一国内・同一地域内の出願を基礎とする優先権を指す。日本の国内優先権に相当。

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