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Landmark Decision by the Unified Patent Court: Shedding Light on Infringement by Equivalence
特許部門

「統一特許裁判所の画期的な判決」~均等論による侵害に光を当てた判決~

Written by Nadine Rocaboy and Boubal Denis

統一特許裁判所(UPC)は、均等論による侵害を認定する最初の判決という素晴らしい贈り物を2024年末に提供した。

判決はハーグ地方部(LD)により2024年11月29日に出された [1] 。 この事件は、2つのスタートアップ企業間の係争に関わるものである:オランダのPlant-e Knowledge B.V.は、生きた植物を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する技術に関する欧州特許EP2137782号を所有し、スペインのBioo社は、植物を組み込んで電気を生産する生物電池パネルを販売している

このようなUPCの決定が待ち望まれていたのは、欧州各国の国内法が適用する均等論の要件が調和されているとは言い難いからである。さらに、欧州特許条約(EPC)は、欧州特許[2] によって付与される保護の範囲を決定する際に均等論を考慮すべきであることを明確にしているが、UPC協定には均等論に関する規定はない。

この判決により、UPCの裁判所として初めて均等論による侵害について見解を示し、どのテストを適用すべきかを説明した。

LDが適用したテストは、以下の4つの質問に肯定的に答えられる場合、バリエーションは特許請求項で特定された要素と均等であると立証する4段階のテストである:

  1. 技術的均等:そのバリエーションは、特許発明が解決する問題と(本質的に)同じ問題を解決し、この文脈において(本質的に)同じ機能を果たすか。
  2. 特許権者の公正な保護:特許請求の範囲の保護を均等なものまで拡大することが、特許権者の公正な保護に見合うか。特に、保護の拡大は特許権者の技術への貢献に見合い、当業者にとって(侵害時に)均等な要素をどのように適用するかが特許公報から明らかであるか。
  3. 第三者にとっての合理的な法的確実性:当業者は特許から、発明の範囲が文字どおりクレームされているものより広いと理解できるか。
  4. 侵害しているとされる製品は、先行技術に対して新規性・進歩性があるか?

仮にLDの意図が「両当事者の提案に沿った様々な国の司法管轄区における実務に基づく」テストを適用することであったとしても、LDはオランダ国内裁判所のアプローチに従うことを選択した(そして、ハーグ控訴裁判所が2020年11月27日に下したオランダの判決Eli Lilly vs. Fresenious Kabi  を明示的に参照した)。

以下の表に示すように、ドイツとフランスの国内裁判所は均等論について同じテストを適用していない。

LDテストの質問は、フランスやドイツの裁判所でも適用されるか?

 

ドイツの裁判

フランスの裁判所

質問1

技術的均等

Yes

Yes

 

質問2

特許権者の公正な保護

均等論による拡大された範囲を正当化するための「公正な貢献」についての分析はないが、「自明性テスト」がある。

特許から出発して、当業者が優先日における専門的知識に基づいて同等のバリエーションを思いつくのに進歩性が必要な場合、均等論は否定される

均等論による(拡大された)保護範囲を正当化するための「公正な貢献」についての分析はない。

フランスの均等論は、特許の観点から、特許可能な(新規かつ進歩性のある)バリエーションを均等論の対象にできる。 

質問3:第三者の合理的な法的確実性:

実質的にYes

いわゆる「パリティ・テスト」は、当業者が特許を読んだときに、そのバリエーションが等価な解決策であることを理解しなければならないとする。そうでない場合、均等論は否定される。  

No

ただし、特許の明細書からそのバリエーションが保護範囲から除外されていると解釈できる場合、そのバリエーションを保護範囲から除外することができる。 

質問4: 侵害疑義製品の新規性・進歩性

Yes

実質的にYes:バリエーションによる機能は、先行技術から新規もしくは開示されていないものである必要がある。そうでない場合、均等論は否定される

 

この最初の判決は、実務者がUPCの前で均等による侵害のリスクを評価するのに役立つ最初の枠組みを与えるものであり、非常に重要である。

しかし、UPC控訴裁判所がこの判決を支持するか、あるいはオランダのテストから逸脱したテストを設定するかどうかを待つことも非常に重要である。

Plant-eは、本訴訟で当時Simmons &Simmons所属、 現在Plasseraud IP所属のオランダ特許弁理士であるJohan Renesが代理を務めた。

 


[2] EPC第69条の解釈に関する議定書第2

[3] ハーグ控訴裁判所、2020年11月27日 イーライリリー/フレゼニウス、EClLI:NL:GHDHA:2020:2052 https://ipkitten.blogspot.com/2020/10/hague-court-of-appeal-sets-dutch.html

 

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